2017年4月12日

オーバーブッキング

現地時刻の日曜日夜に発生したUA3411便の騒動は、他の乗客が撮影した様々な映像と共に世界的な話題に。それに伴い、日本でも大きくネットやメディアでも取り上げられているけれど、そうで無くてもアメリカの話で、当初詳細は英語でしか伝わっておらず、映像での見た目のみで論評するスレッドが大量に流れたので、何か情報が歪んでいっている気がします。まぁ、誰のためというわけじゃ無いけれど、自分なりに思うところをまとめて見ると、

  1. まず責任を取るべき、責められるべきは、今問題となっている男性乗客を無理矢理機内からしかも出血している様子等から暴力を伴うかなり強行的な手段で引きずり出した警官達。映像でも「POLICE」と書かれたジャケットを着用していますが、報道などを見ると所謂警察官ではなく「Chicago Aviation Security Officer」と成っているから「シカゴ空港警察官」みたいな感じかな。昔JRが「国鉄」だった頃、駅構内の警備などで「鉄道警察隊」という組織がありましたが、それと同じなんでしょうね。で、手順としては間違っていなかったかもしれないけれど、実際の対応が過剰すぎたというのは、多分誰もが同意するだろう事実。相手が強行に反撃するとか、何か凶器を所持しているならまだしも、そう言う事は無かったはずですからね。また、「ユナイテッドが暴力で引きずり出した」という話も出回っているけれど、実際の対応方法まで指示することは無いだろうから、この引きずり出し行為に関してはそこまでは言えないでしょうね。
  2. UAの問題は、理由はどうあれゲートを通過して機内に入った乗客をオーバーブックだからといって、今回の処理を始めたこと。その4人のスタンバイクルーをルイビルに送らなきゃいけないことが何時判明したのか分からないけれど、それらも含めてUAの対応にも問題有るでしょう。普通は、ボーディング前に最終登場予定者は確定しているはずだから、その時点でスクリーニングしなきゃいけなかったわけで、それは反省すべき。勿論、今回も直前に他のフライトスケジュールの影響で玉突きで発生したスタンバイクルーの移送なのかもしれないけれど、他の方法も含めてもっと準備すべきだったと思います。
  3. 乗客の男性には、勿論非は無いのだけれど、ただ自らの安全を確保するためには自分が正しくても問題無くても譲歩する事は必要になるわけで、その点この男性は強情すぎたというか翌日の診察予定は分かるけれどもう少し対応方法があったと思います。例えば、この飛行機がこの時メカトラブルでフライト出来なかったら、この人はどうしたんだろうか。その時にこの男性氏が代替手段を持っていたなら、今回もそれを使うことを考えても良かったように思います。そんなこと気にもしなかった、代替も無いから、今回この人はあれだけ強硬に拒絶したんだろうけど。
  4. 飛行機に乗り慣れていない人達にとっては、今回の騒動は想像の範囲外の事だと思うけれど、思い込みとか勝手な想像で話をしている人も多いのも気になります。ある意味無責任な話題になるのだけれど、仮に自分の経験値に基づいているとしても、それが全てでは無いだろうし、「自分はこう言う経験をした」は事実だから問題無いけれど「だから〇〇は××だ」と言ってしまうのはどうだろうか。
    1. オーバーブッキングが怪しからん、という意見が多いのには一寸ビックリしました。勿論、本来は指定席分だけ販売すべきで実際新幹線でオーバーブックする事は無いのだけれど、これは国民性やそのシステムの判断ですからね。新幹線と違って、飛行機は出発するその時点で空席があるかどうか判断出来るわけで、その場合必要性がある乗客がいれば空席を埋めるのはビジネスとして当然。そう言う意味で、今回の場合は一度搭乗してから降ろされたことが問題で、事前にゲートで選択されていたらここまで大きな騒ぎにはならなかったでしょうね。あと、前払いでちゃんと料金取って席数だけ販売しておけばオーバーブッキングしないだろうという書込もあったけれど、基本飛行機は搭乗日までに支払い完了しているはずだから、そう言うことは無い。逆に、航空会社としては予約を受けて支払い完了していれば、その乗客を目的地まで運送しないといけなくなるから、空席というのは問題。ただ、だからといっていつまでも遅延できるわけでは無いから、出発時刻の一定時間前でクローズして、来ない乗客は「No Show」と扱い、ウェイティングで待っている乗客にその席を振り分けるんですよね。今回、そう言うことがあった上でのオーバーブッキングなのかどうか不明ですが、だから本来はドアクローズまでに全て完了していなきゃいけないはずの話が、多分UA側の手違いで後から発生したからトラブルになった、その責任はUAとしての問題でしょうね。
    2. ボランティアの4人をランダムに選択したと言いながら、FFPの上級会員や上級クラスの乗客は外れていたのが怪しからんと言うけれど、これもロイヤリティや料金クラスによってサービス内容に差があるわけだから、これも仕方ない。ランダムに選択と言うのも、全乗客からではなく、非会員で料金クラスも低いグループから選ばれたのだと思うけれど、多分その選択方法に人種とか民族差別みたいなことは無いと思いますね。特に、国際線の予約時には国籍や母国名を入れたりしてますが、国内線の場合は無いんじゃ無いかな。最も事前にUAのMPのアカウントがあってプロファイルを登録していれば別だけれど。
    3. 男性がアジア人(自分で「中国人だからなのか」と言っていたという話しも)だからとか、4人は全員アジア人だった、みたいな話も広まっているけれど、確かにこの男性は映像を見る限りはアジア系で有る事は確かそう。ただ、それ以外の3人がどういう人なのかと言う情報はほとんど無くて、見てみても伝聞情報なので、この「アジア人だから」というのは正確では無いでしょう。私もUAを中心にAAやDL(NW)に何度も搭乗しているけれど、アジア人だからというよりは「英語が通じない」という理由で一寸邪険にされたことの方が多かったような(笑)。仮にUA側がこの男性の言い分を認めてしまうと、次の候補者も同じ理由で拒否できるわけで、そう言う意味でこの男性には選択肢は無かったとも言えるでしょうね。
    4. スタアラは問題が多い、ANA利用者がUAを利用することをANAは認めるのか、みたいな書込もあったけれど、それは別の話でしょう。仮に今回のトラブルがANA運航の世界で発生した場合、多分同様の手続きをするでしょうね。勿論、最後の空港警察官が無理矢理乗客を降ろすことはさせないだろうけど。ANAの場合は、その4人のスタンバイクルーをデッドヘッドで送ることを諦めて、その4人が搭乗予定の翌日のフライトを遅延させるか、キャンセルさせるかもしれない。
  5. 「私も酷い目に遭った」という人の経験談というか意見も多く書き込まれていたけれど、それならそれで別の航空会社なり交通機関を選ぶのが少なくともアメリカ社会の「自由」じゃないかと。少なくとも航空路に関しては、幾らでも選択肢がありますからね。一寸違うなぁと思うのが、ANA/JALと比較すること。日本の航空会社は確かにサービス品質は高いし同じ日本人同士日本語が通じることでの安心感もある。それに多くの日本人にとっては、「飛行機に乗る」というのはまだまだ特別な「ハレ」の機会で、それに対してアメリカ人にとって飛行機は、日本で言えば山手線とか乗り合いバスを利用するようなもの。日本人にとっては、それこそ新幹線の指定席とかグリーン車に乗る感覚で飛行を使うのに比べたら米系の飛行機の対応はまぁ不満でしょうね。それでも、国内線とは言えファーストクラス位ならまだ我慢できるかもしれないけれど。このあたりの感覚の違いを知らないで・無視して話をするのは一寸乱暴かなと言う気もします。
  6. ゲート前でオーバーブッキングの処理が出来なかったこと、最終的な諸々の対応も含めて後手に回ったことは、UAのミス、責任だとは思うけれど、少なくともボランティアを募集して、それも保証金US$400から始まり、US$800になり、最後はUS$1,250までオファーが挙がったとも言われていて、それは正しい手続きだし普通に考えてかなりの厚遇だと思う。だから、少なくともその部分に関してはUAの手続きは間違っていなかったと思う。ただ、どんなに正しく処理したとしても、最終的な結果が駄目なら全て駄目なわけですが。
今回の件があり、個人的にUA MPから脱退する、あるいは他の航空会社に乗り換えるかというと、これも微妙な話。UAを利用する理由には、例えばフライトスケジュールが便利とか、その航空会社しか飛んでいないとか、色々理由がありますから。それにアライアンスの便利さもある。少なくとも国際線が絡む国内線利用は、同一アライアンス特に関係が深い、UA/ANAの利便性は捨てがたいものがあります。仮に自分が今回の男性氏の立場になったら、まぁ多少はごねて保証金アップや、もっと有利な後日のフライトの可能性を聞くことはあっても、ここまで意固地には成らないだろうなぁ。最初にも書いたけれど、もしメカトラブルでキャンセルになったら、というのと同じ事ですから。例えば、何か命に関わる理由があるとかなら別かもしれないけれど、日本以外の場所ではオーバーブッキングに関しては今回の様に結構ドライに対応されるのが常。それに抗っても正直良くはならないと思う。それならば、ボランティアに応募する保証に関して交渉する方が、少なくとも自分のためにはなると思いますね。それ位の気持ちで利用した方が、身も心も安全だと思う。

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