2016年11月30日

キュレーションの罠

DeNAが運営する医療系情報サイト(キュレーションサイト)「welq」に掲載されている記事が、他のサイトからのパクリやそれらをつなぎ合わせた不確かな情報を大量に掲載することで、本来の医療関連情報提供ではなく、アクセス数を延ばす事のみ目的としたSEO対策サイトだという話。詳細は永江さんの記事(一回目二回目三回目四回目)が詳しいのですが(というか、彼が火付け役と言って良いのかも)、こういう傾向のサイトが増えているのは、やっぱりネット社会だなぁと言う気がします。

実は、まだインターネットが特別なもので、ネットアクセスはBBSとかNews Group等の所謂パソコン通信で情報にアクセスしている時代にも、似たような感じのものがありました。当時は、それら情報にアクセス出来る人は、それなりに知識も必要だし、今よりも高価な機材も必要だったので、かなり限定された存在。だから、今で言うような検索結果などの情報は「会議室」というような掲示板システムに集約されていて、そこに何か疑問とか質問が書き込まれると、致死のある人が答えて助けるという互助会システムが何となく成立していました。で、それなりの人がそれなりの回答を書き込むなら良いのだけれど、書き込むことに喜びを得るというか、目立ちたい人みたいな存在が増えてきて、だから相手の質問内容も良く理解せずに自分の知識で勝手に回答を書いたり、思い込みで書いたりして、結構荒れる場合もありました。その後、そう言う互助会システムがネットでも作られるように李、例えば新聞社のサイトでも「発言小町」なんていうのが良い例だと思うけれど、もう玉石混交をさらに拡大したようなカオス状態になることも。サイトによっては、回答数が流し彼のポイントになる場合も有るので、それが兎に角書き込む、兎に角回答してポイントを稼ぐみたいな場合にもなるんですよね。MicrosoftのTechNetなんかその最たるもので、中途半端な物知り顔のユーザーが書き込むことを目的にアクセスするから、実際の技術的な解決には繋がらない。まぁ、ゼロとは言わないし、その中にもヒントに繋がる情報もあるから仕方なくアクセスしているけれど、本当ちゃんとした管理者が居ない場所だからもうどうしようも無い。

これまでは、情報の不確かさはそこにアクセスしている利用者のばらつきが原因だったから、ある意味自己責任で利用するしないを判断すれば良いだけ。ある意味自然発生的に情報が集約されて生成されている場所だから、自己責任と思えば良いし、その場所のレベルなり雰囲気を判断すれば、どの程度の信頼感があるかどうかも分かるし。ところが今回のwelqのケースは、運営側が最初から掲載する情報の内容・質を度外視して、兎に角SEOに特化した記事を大量投入することで、サイトとしてのビジネス(広告収入)を最大化することが目的にしている点で、これまでの「余計な善意」による迷惑では無く、意図した行為であるからアウトですよね。「キュレーション(curation)」サイト、あるいは「まとめサイト」の類が無意味とか無駄とは言いません。ある程度情報を整理して、要点をまとめることで、何て言うかに詰めて濃度を高めるような行為も意味はあると思います。ただ、海水から塩を作るにしても、サトウキビの絞り汁から砂糖を作るにしても、煮詰めてお終いでは無いわけで、精製したり不純物を取り除いたり、場合によっては別の物を添加したりして最終製品を作るわけで、キュレーションサイトであってもその手間を掛けないものは、集めた情報の総和にも足りない情報サイトになるだけ。で、今回の場合は、そんな情報的視点以前のビジネスモデルとしての不正義というか不義理のビジネスモデルを、DeNAというそれなりに知名度のある会社がやっていると言う事にちょっと憤りどころか呆れてしまう。いゃ、会社の大小は関係無いですけどね。

私は自分自身のテーマというか前提として、まずは情報は疑って掛かることにしています。そこから、その情報の正確さ整合性を確認する動作が決まってくるから。疑いがあって、自分の理解や知識との差分が分かるから、その差分を埋めるものを捜せば良いわけですからね。じゃぁ、何を持って「正しい」と理解するかというと、まずはその情報元が明らかなもの。統計データも信用できる組織や相手からなら信用する。場合によっては、単位や数値で誤解する場合が有るから、統計データもまずは疑う必要がある。あと可能なら、日本語以外の英語のソースにも当たる。特に翻訳物などは、意図的に意訳していたり別の内容になっている場合もありますからね。そうやって複数のソースから回答が得られて納得したら、初めてその情報は自分にとって「真実」と言えるものになるわけです。結局、他人がまとめたものはその人にとっては事実・真実化もしれないけれど、それが自分にも当てはまる確率はそんなに高くないというか先ず違うという事から認識しないと。それがネットリテラシーで一番必要なものでしょうね。

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