2016年3月17日

どっちが正しいの

川内原発の放射線モニタリングポストの性能に関して、不十分という記事を掲載した朝日新聞。ところが、取材対象側の原子力規制委員会は「犯罪的」とまで言って激しく反論。モニタリングポストの性能が不十分では無く、目的に応じて複数の性能のポストを設置しているという説明。

朝日新聞の記事を読んで、これは作為的な文章じゃ無いかと思うのが「うち22台は毎時80μSvまでしか測れず、すぐに避難する判断には使えない。」というところ。その前の文章では、毎時20μSvが一日続いたら一週間以内に非難し、毎時500uSvに達したら即非難するというもの。そういう意味では、80μSv迄の性能があれば、初期の20μSvに関しては十分カバー出来るわけです。仮に、20μSv以上になっても、80μSvまで4倍のスケールは確保しているんですよね。方や、即非難が必要な500μSvと言う事は、20μSvに比べて25倍もの差があります。これ電気テスターを知っていれば凄く分かる話で、要するに微弱電流と弱電、さらには強電を一台のテスターで計測しようと思うと、レンジ切替をしないといけない。モニタリングポストにその機能があるなら良いけれど、多分コストや計測センサーの関係でそういう器用なことが出来るものは無いか、合ってもコストが高いだろうから、そんなに台数は置けない。で、敏感なセンサーと、強度が高いセンサーを混在させることで両方のケースに対応しようとしている、と考えるのが一番無難なんじゃ無いだろうか。

既に色々なところでも取り上げられているけれど、元の朝日新聞の記事では48台のポストの半数近くが最大値(=500μSv)に大きく足りない性能しかないことが問題だと言っています。でも、そもそもこのモニタリングポストが最大値を計測することが目的では無く、それ以前の20μSvの状態になったかどうかを判定することが一番重要なのでは。そこが、まずは非難すべきかどうかの最初の判断基準なのですからね。それに、既に放射線が発生している、例えば福島第一原発の周辺線量を計測するのであれば、最大値まで考慮したモニターが必要かもしレナいけれど、この場合は普通は問題無い状態である場所で、何かトラブルがあった時にそれを判断するためのモニター。その事故の状態にも寄るけれど、いきなり最大値まで達することは無いだろうし、その前兆として平時の値が何倍もの値になったり、それが急に変化したりという事象が発生するはずで、鹿児島の今の線量は0.05μSv位。とすると、通常監視用のモニタリングポストは、0.01μSv位の感度は最低でも必要なわけです。その機械で80μSvまでカバーするとなると、8000倍ものスケールが必要で、500μSvとなると5万倍ものスケールが必要。800倍のスケールも凄いと思うけれど、これは技術的にも厳しいでしょう。

この記事の記者が何か勘違いしていると思うのは、このモニタリングポストの第一の目的は通常線量からの異常を検知するもので、決して危険値や最大値までカバーすることでは無いはず。この機種に技術的知識が不足していたとしても、素人が短絡的にこう言う発想をするならまだしも、仮にもメディアの人間であるなら、「何故こういう機能不足と考えられるモニタを配置しているのか」という疑問を調査して、その結論を文章にするべきではないだろうか。穿った見方ではあるけれど、自分の期待値に近い情報を鵜呑みにして、それを疑わない事が、メディアとして、あるいはジャーナリストとしての資質に欠けているとは思わないんだろうなぁ。

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