2015年5月12日

お客様の声を聞く

ITmediaの記事から、「お客様の声から生まれた製品が世界を変えられない理由」。エンジニア、製品開発をしている人間にとっては、凄く納得できる内容ではないだろうか。確かに「お客様の声から生まれた製品」もあるとは思います。個人的に思いつくのは、日本の至宝(笑)「炊飯器」なんかは、結構近いんじゃ無いだろうか。最近でこそ「炊き方、炊き味」に話題が集中していますが、其れ以前に例えば希望の時間に炊き上がる予約機能とか、一度炊いたご飯をどれだけ美味しく保温出来るかという保温機能、さらにはお粥機能等、こういったものはリアルな声から追加された機能だと思います。で、見てみると、記事にも書かれているように、何か魅力的な製品が市場に登場して、それに対しての多数の声とかグッドアイデアと言うものを入れ込んでいくのが、こういう「お客様の声」なるものと言えるのでは。

一方で、コラムにもあるように、まだ世の中に無いものに対しては「お客様の声」も無いわけで、そう言うものが世の中に出るチャンスは言ってみれば「エンジニアの閃き」「経営者の我が儘」みたいなものが、幾つも登場しては消えていくうちに、ホームランになるものもあると言うことですよね。SONYのWALKMANは、井深氏の我が儘=どこでも良い音で音楽を聞きたい、と言う欲求から社内の開発部門に当時製品化していたものに改造をリクエストしたというのは有名な話し。たまたま「声」を出したのが会社の役員だったからそう言う話になるけれど、言ってみれば自社製品の「お客様の声」とも言えるわけですが、多分この声が一般のお客様から出たとしても、取り上げられることは無かったでしょうね。

市場から見たら極々少数の製品であっても、それに対してのお客様が存在している限り様々な「声」は存在するわけだし、そこからどれだけのアイデアや改善点を汲み出して次期製品に生かすかというのは、ある意味エンジニアの醍醐味でもあるし苦労でもあるわけですよね。自分自身もそう言う場にいるので感じることが色々あるのですが、例えばWALKMANが登場した1970年代から80年代というのは、日本の景気も良い時期で、予算もそうだし何かやれるチャンスもあったんですよね。井深さんが、いかにSONYの重要人物とはいえ、自分のために製品改造をリクエストするというのは結構我が儘な行為なわけで(笑)、それでもそう言うことが許される「余裕」があった時代だから可能だったことでもあります。もう一つの余裕は、仮に何か失敗しても、それを享受してさらに次のチャレンジを許す度量と言うのも重要。最近は一寸以前ほどの勢いは無いかもしれないけれど、例えばニトリなんかは本当に毎月製品を作っては売り出しているわけだし、量販店のビジネスモデルだって売れ筋の製品はどっと売りだし、死に筋になったらぱっと撤退すると言うことの繰り返し。ロスすることを前提に、そのロスを最少化しつつ、当たったときのリターンをどれだけ大きくするのかと言うどちらかというと製品開発よりもマネージメントモデルのような気はしますが。iPhoneの成功は、その前のiPodの成功があると思いますが、その成功の理由はiTunesというサポートソフトの存在だったと思います。そのiTunesってAppleが開発したわけじゃ無くて、確か買収して利用して、日々機能改善していったもの。カセットテープに録音して順番に聞くと言う行為を、好きな音楽を自由に取り込んで自由に聞くと言うスイートスポットを付いたから成功したもの。その後のiPhoneやiPadの成功にも、それぞれ色々な理由があると思うけれど、やっぱりiTunesと言うベースがあっての成功だと思う。

結局は、製品に携わるエンジニア、プランニング、マネージメント、等々がどれだけ敏感に色々な情報に耳を傾け目配りして、そこから何かを生み出す努力をしているかと言うことに尽きるんですよね。

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