2015年2月26日

国内回帰の誤解

円安の影響や、世界の工場である中国での色々な問題(賃金アップ、政情不安、対日感情、etc...)等もあり、一部の企業は、より労働コストの低い地域への移動だけで無く、日本へ製造や開発を戻す傾向が最近目立ちます。これを「国内回帰」「地方活性」みたいな感じで取り上げる報道が少なくないけれど、それって大きな誤解じゃないだろうか。

先ず、円安による輸入コストのアップというのは、確かに大きな理由だと思います。ただ、物流コストなんてどこでも一番最初に最も削減するところだろうから、コストリカバリーというよりは、付加価値としての納品日時の短縮とコストとの兼ね合いと言う理由の方が大きいのでは。「日本国内で製造した」という安心感もあると思いますが、それ以上に製造してから数日、早い場合には出荷した翌日には配送されるというスピード感の方が重要ではないかと。

次の理由は、やはり海外、特に中国で製造しても以前ほどコストダウンが見込めないことでしょうね。ただ、だからといって何でもかんでも国に戻せるわけでも無く、特に新規に国内に製造設備を作るなんて言う更なる投資は出来ないので、結局国内需要を睨みつつ既存の設備や人材で対応出来るものは戻す、と言う事が殆どだと思います。

言い方は悪いけれど、消極的理由、あるいは消去法的理由で、一度外に出た製造・開発が国内に戻ってきていることは事実。ただ、それはあくまで一過性のことだと言うことも理解しないと、これで経済が上向くと言う楽観的なことは考えない方が良いでしょう。ただ、そう言う回帰が生まれた地方にとってはチャンスであることも確かで、これをとっかかりに以下に定着して地元に残って貰えるか、その工夫は必要でしょうね。その中でも、地元だけで無く企業側にもメリットのある提案が出来れば、新規事業の開拓にも綱が割るわけだし、そう言う方向に進めないと今後は日本国内での製造・開発産業って減少するだけだと思う。

例えば、先日の「ガイアの夜明け」でやっていた内容ですが、衰退する縫製工場とセレクトショップを繋げるビジネスをしているベンチャーが有り、それまで1000枚とかの単位で無いと発注できなかったオリジナル商品が10枚とかでも発注できるようになったという話。これ、20年くらい前に日本経済がどん底だったときにもあった話で、ある商品を製造して欲しいのだけれど、どこに依頼しても取り合ってくれない。ところが、経済が不調になりそれまでの仕事が減ってきたら、以前は断られた内容・数量の仕事で設けてくれるので、以前は作れなかった自分のアイデア商品を作る事が出来るようになった、と言う話。1+1を3とか4にすることも重要だけど、1+1で2'とか2.1とかにするだけでも新しいビジネスチャンスが生まれるんですよね。そう言うとっかかりにしないとこれからは生き残れないし、そう言う発想が日本で成功する切っ掛けだなと再認識しました。

本の20~30年前だと、例えば同好の有志が集まるにしても物理的に近くの者同士で集まるしか無かったのが、今ではネットワークを使えばどことでも手をつなぐことが出来る。同様に、これまではマーケットも限定されていたのが、売り出し方にしても対象にしても、世界を想定したビジネスが可能になるので、それだけターゲットを大きくすることが出来るんですよね。そう言う考えでビジネスプランを立てると、ビジネスの間口が広がり成功する確率も(やり方にもよるけれど)大きくなるわけです。言葉の綾では無いけれど、「地方回帰」という言い方よりは「適所回帰」という言い方をした方が、これからのビジネスチャンスに対して正しい表現のような気がします。

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