2013年3月26日

数字のレトリック

昨日、朝日新聞に掲載されていた記事、「電力9社、原発維持に1兆2千億円 12年度稼働は2基」。これだけ巨額のお金が、動いていない原発のために消費されている、という事を言いたいんだろうけど、でもちょっとまてよ、と。

公開されている部分の記事を読む限りでは、多分記者の意図としては、発電していない原発に対して1兆2千億ものコストが掛かるなんて、なんて無駄な物だ、と言うようなことを言いたいのだろうと想像されます。でも、今福島第一でまさに作業しているように、仮に発電していない原発であっても、その維持に発電時と同程度のコストが掛かるのは分かっていることで、だからこそ日本以外の原発では出来るだけ長く連続運転しようとしているわけですよね。日本の場合は、原発で何かトラブルが発生する度に原発の定期点検の期間を入れているので、今は確か一年くらいで停止して定期点検期間に入るわけですが、止まっていても維持費が掛かるから本当は出来るだけ定常運転をする方が良いことは以前から分かっていたこと。

それに、記事の中で「1兆2千億円」と書いているのに、掲載されている表には7900億円余りしか掲載されていないし、日本原電への発電量支払いにしても、半年で757億円とのことなので年間では約1500億円。これを足しても、まだ1兆円に届きません。どう言う計算をしているのだろうか。仮に、非公開(有料ページ)部分にその説明があったとしても、そこにアクセスする人は限定されるわけだから、公開部分のみを見た人には理解出来ない情報が提供されていることになるわけで、それってメディアとして正しい姿勢なのと聞きたくなります。

で、「原発はいったんつくると巨額の維持費がかかるためで、これらは電気料金に上乗せされて家庭や企業が負担している。」と言っているんですが、それって金額の多少はあってもどの設備も同じなわけで、例えば火力発電ではどれだけの維持費が掛かるのか、そういう部分だって比較しないと評価できません。それに、じゃあこれまで運転していた時には、どれだけの利益が生まれていたのか、ということも比較しないと本当に発電方法として適切なのかという評価は出来ませんよね。今だって、LNGのコスト高で年間3兆円近い赤字になっていると言われているけれど、原発が稼働していたらそれが無かったのならば、そこはコストと利益のトレードオフを考える必要もあるでしょう。

こちらのデータでは平成22年3月の国内電力会社の売上高(約16兆円)が示されていますが、これは震災前の値なので大体25%位は原発が使用されているので、約4兆円は原発の電気になります。それに対して、維持費が1兆2千億円、その他経費(燃料費等)がどの程度掛かるかにも寄るけれど、仮に合計で2兆円としても半分は利益を生んでいて、その分他の負債に回っているとしたら、そのメリットも考えるべきでしょう。実際問題、今再生エネルギーの買取制度が実施されているけれど、あれだつて「電気料金に上乗せされて課程や企業が負担している」お金なわけです。いゃ、再生エネルギーは余剰電力を売電しているから違うと言われるかもしれないけれど、それなら電気料金の単価以上の部分はどう解釈すれば良いんだろうか。それって、やっぱり「負担」しているわけだし。普及のためというのならば、その家庭に対しての補助金とか税制優遇とか、そう言う形でサポートすべきで、全国一律に負担というのは未だに納得できない。

この記事のデータは「決算を朝日新聞が調べた」そうですけど、何となく自分達の都合のよう部分だけをつまみ食いしたというよりも、単に大きな数字を積み上げて脅しているようにしか見えない記事ですよね。何かを伝えようという文章では無く、どこかに誘導しようとしている文章に感じます。

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