2012年9月7日

コンピューターは星新一を超えられるか

最近、昔ほど聞かれなくなった「人工知能」を利用して、星新一氏のショートショートを解析し、「星新一風ショートショート」をコンピューターが創作するという記事。文庫本ででている星新一氏のSF小説は、多分ほとんどすべて読んでいるけれど、あのぎゅっと凝縮されたショートショートを果たして創作する事は可能だろうか。語句解析をすれば、文体は似たものは出来ると思いますけど、問題なのはその内容ですよね。オチというか。ただ、試みとしては大いに応援したいし興味もあります。

記事の中にも書かれているけれど、サンプルとしては非常に良いですよね。作品数は多いし、内容もバラエティーに富んでいるけれど、作品のサイズとしてはどれも「ショートショート」として定型的なものに統一されているから、比較検討するのも容易だろうし。ただ、既存の作品を解析するにしても、そこにあるのは星新一氏の言葉を借りれば、「定石の上に異質のアイデアを散りばめた」ものなわけだから、まずはその「定石」をコンピューター(人工知能)が認識して理解出来ないと、単に外から見える星新一風のパターンに合わせた文章が出来るだけだろうな。

また、仮に定石の部分(=ベース)が出来たとしても、今度はその上に展開させる「アイデア」をどうやって着想する加藤問題も有りますよね。例えば人間なら、日々の生活から膨大な情報を得ているので、そこから何か発送を得ることも可能だろうし、いろいろな文献とか映像とか、そう言う二次資料も豊富にあります。コンピューターの場合、そういった副次的な情報をどの様に扱うのか、その部分が一番難しそうな気がする。それこそ、星新一氏の作品だけで無く、いろいろな分野の小説やらドキュメンタリー情報やら、一般的な情報やら、そう言う膨大なDBがあって、その中で何か自分でルールを決めてピックアップして、文章に整形して、それを解析した「星新一的パターン」と比較してみる、みたいな。後は、実際に作った作品評価を、どの様にフィードバックしていくかですよね。例えば、オチとして意外性の尺度は同定義するのか、その意外性とオチとしての面白さはどう相関するのかとか。

それこそSFの世界ではないけれど、何か有機的な素子を使った「曖昧あるいは偶発的なデータ作成」が出来るような仕組みを、コアの中に持っていて、それをキーにして情報構築するような仕組みが出来るかも。そうすると、人間の持っている「意外な発想」に近いアイデアが人工知能から生まれるかなぁ。それと、「忘れる」という機能も必要でしょうね。膨大な量のデータを保持して、それらをすべて検索・比較・評価出来るのがコンピューターのメリットだけど、人間の場合はそれが出来ないから、曖昧な部分や違う視点からの発想が出来るわけですし。アクセス頻度の少ない情報はどんどん改装の奥に押しやって「忘れた」りするとか、何か突発的に「思い出す」機能も必要だろうなぁ。

星新一氏の「新しい作品」も読みたいけれど、星新一氏に影響を受けた次の世代やその次の世代の作家が新しい作品を生み出しているように、さらに新しい作品に出会えたら嬉しいですね。

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