2012年3月16日

iPad(TTG)は、紙の発明に匹敵するか

ITmedia、神尾寿氏のコラムから、「新iPadは紙に匹敵するインパクト」という話。まだ実機にはお目に掛かっていないけれど、報道されている記事やリリースレターを見るだけでも、十分にその魅力を感じることが出来るiPad(TTG-The Third Generation by個人的な勝手なネーミング)。で、実機に触れた神尾氏は、このiPadを絶賛。特に、表示密度が4倍になった新しいRetina Displayには魅了されているようですが、そりゃ表示密度が4倍になり、一般的な印刷物に近い表示品質になれば、誰でも驚くでしょうね。

で、「紙の発明に匹敵する」とまで称えられているんですが、天の邪鬼な自分は「それはどうだろう」と、つい反論したくなる(笑)。

これまでも書いていますけど、iPadの魅力はiPadと言うデバイスではなく、iTunesも含めた「iPad Eco-system」とでも言うべきものの魅力だと思うんですよね。一足早く、さらに高精細な環境を提供しているiPhone 4/4Sも同じように評価されても良いと思うけれど、サイズのメリットというか、このiPadのサイズというのが「紙、書籍、雑誌」と比較する場合には重要。そう言う意味では、これまでの紙書籍に対してかなりインパクトのあるデバイス担ったことは確かだと思います。ただ、一方で、じゃこのRetina Displayを、例えば今使っているほぼ同サイズのThinkPad X201sのLCD(1440×900)と交換したら、そのインパクトはもっと大きいと思うんですよね。入力系もキーボードやTrackPointも揃っているし、CPU/Graphicパワーにしても多分大きい。SSD/HDDにしてもそう。唯一負けているのは、OS位だろうけど(まて)。確かに、iPadのような軽快性は無いけれど、ツールとしての強さは、多分そっちの方が大きい気がします。それって、結局は高精細なディスプレーをもっと使い込むと言うか、使い倒す環境としてPCの方にまだまだ余裕はあると思うんですよね。ただ、OSとiTunesという二つの要素ではiPadに勝てなくて、それが決定打になっているといっていいかも。

今回のiPad(TTG)で、一番注目すべき内容は、私はiCloudの日本での提供開始だと思います。これにより、iPad/iPhoneユーザーは、複数の、それも2台とか3台とかじゃなくて、5台とか6台という単位で、Appleデバイスを買いそろえて、TPOに応じて使い分ける様になるんじゃないかと思っています。其れが一番、「紙媒体を駆逐する発明」と言えるかも。

ところで、iPad2も含めて、いろいろなタブレットデバイスをそれなりに体験していますが、どうしても「片手で本体を保持しつつ、反対側の手で操作する」というのが慣れません。膝の上に置いて操作すると、画面が真上を向いてしまうので、見にくくなるし。タブレットユーザーの人を見ていると、ほとんどの人が画面チルトになるカバーを使っています。同じように問題で、記事にもあるように内蔵カメラで写真を撮る場合、レンズの向きと其れを表示する画面の位置が、必ずしも撮影者にとって見やすい関係にはならないので、正直いつも「レンズ部分だけでも中に動かないかな」と思います。それでiPadの魅力が半減するわけではないけれど、携帯デバイスの課題じゃないかと私は思いますね。

で、新iPadは紙媒体を駆逐する引き金になるかということですけど、其れはまだ無理だと思う。確かに表示・印刷品質は同等になってきたでしょうけど、三次元に変化する紙媒体に対して、平面表示しか出来ない今のデジタルデバイスは、表現力でまだまだ劣る存在。例えば、グラビア印刷誌だと、ちょっとした光りの加減で発色とかコントラスト違いみたいな物を感じることが出来るけれど、フラットなデジタルデバイスの画面では、輝度・コントラストの変化にしかならない。目的によって、棲み分けは出来つつあるけれど、でもまだまだ紙の発明(と、それに付随する印刷技術の進化)は偉大であり置き換えられない物だと感じますね。

0 件のコメント:

コメントを投稿