2011年12月31日

今年の十大ニュース

さて、今年も大晦日12月31日。年末恒例の、自分が感じた今年の十大ニュースで、今年も締めくくりです。
  1. 東日本大震災時のIT活用
    どちらかというと、次のSteve Jobs氏死去をトップに上げる人が多いんじゃないかと思うんですが、個人的にいろいろな意味でインパクトが大きかったのが、震災時やその後のIT技術・サービスの影響力の大きさ。震災直後に都内の交通網が停止した時に、一番役だったのはTwitterでのリアルタイムの情報。また、震災直後からインターネットでの情報収集と、その拡散、さらにはネットワークで色々な場所で繋いで、迅速に必要なツールの開発提供が出来たことは、自分もその業界の端くれで仕事をしているだけに嬉しい出来事でした。また、カーナビデータを集めて、使用可能な道路状況をグラフ化したりというのは、今後新しいサービスにも繋がるんじゃないだろうかと思います。

    16年前に発生した阪神大震災の時には、インターネットはそれなりに普及していたけれど、まだ今のようなレベルではなかったので、どうしても報道やメディアの「映像中心」の情報発信だったと記憶しています。今回も、個人の携帯とかデジカメ等を使用した衝撃的な映像情報も多いけれど、それ以上にTwitterやFacebookのようなテキストベースのリアルタイム情報が大きな成果を上げたと思います。そういうインフラが存在していて、被害を受けながら一部でも何とか活用出来たことで、救われたことも多かったんじゃないかと思いますね。この教訓・成果を、将来の災害に備えて、是非実用化し基盤化しなくては行けないと思います。
  2. Steve Jobs氏死去
    ある意味、今年最大のニュースと言っても良いでしょうね。コンピューター界のカリスマ、Steve Jobs氏の死去は。MicrosoftのBill Gates氏は「Windowsという一つのビジネス」を作り上げたけれど、AppleのSteve Jobs氏は「Appleという一つの文化」を創り上げたことが、彼との大きな違いだと思います。ただ、彼の残した業績は疑うことのない偉大なものであるけれど、実は彼にしても失敗や挫折は幾らでもしているわけで、決して何でもかんでも出来るスーパーマンだったわけではない。そういう部分は冷静に評価しつつ、でも何故これだけの成功と成果を生むことが出来たのか、そういう部分をもう一度振り返ってみたいですね。
  3. iPad2からTabletが乱立・ブームに
    iPadが火付け役となり、「大きなiPod touch=iPad」から、やっと「iPad2=Tablet」という別のプラットフォーム化が確定し、それに追いつこうと一斉にメーカー各社から似たようなTablet端末が今年は幾つも登場しました。基本的には、iOS vs Androidの戦いなわけで、Windows8が来年登場してもあまり影響しないように思うのだけれど、でも「Tablet」というプラットフォームがさらに拡大すれば、また別の視点が生まれるのも確か。携帯音楽プレーヤーとして、Walkmanがその市場を作り長きにわたり占有していて、iPodという競合商品も当初はそれ程影響力は無かったけれど、iTunesが登場したことで一気に携帯音楽プレーヤーの視点が変わりましたからね。でも、まだ来年は乱立・混戦の時代ではないだろうか。
  4. スマートフォンがメジャーに
    iPhoneの一人舞台だったスマートフォン市場で、Android系もシェアを拡大し、さらに日本国内で言えばFeliCaやワンセグ・赤外線という日本固有のサポートが入るようになったことで、やっと国内でも「使えるスマホ」になりました。元々の機能である「通話」だけ考えれば、多分二つ折りの耳と口に接したデザインが一番だと思うのですが、今の「ケイタイ」利用で多くを占めるメールやWebアクセス等の利用目的を考えると、スマホの「タブレット型デザイン」が一番使いやすいですからね。今自分が使っている携帯電話も、そろそろ3年近く使っていることになるので、多分来年にはスマホに切り替えるんだけど、現在出ているモデルで早めに切り替えるか、来年の夏モデル迄待とうか、ちょっと悩むところです。
  5. 高速通信サービスが普及
    docomoの「Xi(クロッシィ)」、auのWiMAX、Softbankの4Gと、LTE(4G)データ通信サービスが本格的にスタート。それと共に、「ポケットWi-Fi」と呼ばれるような、LTEをWANにした小型の無線ルーターがブームになったりしたのは、ちょっと時代を感じます。似たような製品は、PHSを利用したものが以前ありましたが、本当に「繋がるだけ」という印象だったのが、最近のものは「使える」と言うレベルですからね。ただ、そういう高速通信サービスの登場は、料金制度の変更も伴いつつあり、これまでの定額制が従量制に変わってきています。勿論、相当のヘビーユーザーでなければ実質定額制みたいな内容ですが、それでも今後データ量は増加するとはあっても減少することはないので、将来的に従量制の内容が変わることは覚悟しないと行けないかも。その間に、震災対策も兼ねて、日本全国Wi-Fi化を国策として進めてくれないだろうか。
  6. PC業界再編
    DOS/V時代には「98 vs DOS/V」なんていうTV-CMまで流したNECと当時のDOS/Vの雄IBM PCの流れを組むLenovo Japanが合併するというニュースは、PCの黎明期から知る一人としては感慨深いニュースでした。さらには、やはりHDDの元祖IBM HDDの流れをくむHGSTが、WDに買収され、同じHDD業界のライバルSeagateはSamsungのHDDを買収して、とうとうHDD業界は、WD、Seagate、東芝の3社に収斂することに。また、DELLを抜いて世界一位になったHPが、一時PC事業を分離なんていう話も出たし、また、LenovoがAcer、DELLを抜いて業界2位になったりと、今年はめまぐるしく業界の内容が変わっていった一年だったように感じます。来年も、何かあるのでは、とちょっと勘ぐったりして。例えば携帯電話メーカーのように、国内PCメーカー同士が合弁でPC事業会社を立ち上げたりとか。
  7. 日本製家電製品の凋落と次の一手
    地デジ移行の駆け込み需要後の落ち込みや、さらに震災の影響で製造計画が狂い、液晶テレビの販売不振が大きくなった一年。それだけでなく、これまでは世界中で評価されていた日本の家電製品が、中国、韓国の製品に押されて苦境に立たされています。以前だと、「コスト vs 品質」の戦いで、まだ日本製品にも勝負する余地が有ったけれど、どんどん汎用化されていく家電製品では、低コストでも品質がそれなりに備わるようになり、お客様の軸足は「安くてそこそこ」の中国・韓国製品に一気に傾いてしまいましたからね。自分たちが子供の頃から親しんできた「テレビ」という存在は、かなり希薄になってきたと思います。それは、テレビというデバイスだけでなく、その裏にある「放送局」という存在も含めて。映像ソースの配給元として、放送局の存在は今でも大きいけれど、VODやレンタル、さらにはYouTubeにニコ動みたいなものまで、どんどん多様化してパーソナル化していく時代に、「テレビ」というシステム自体が陳腐化してていると感じますね。今後は「ビジュアルデバイス」として何か変化しないといけないでしょうね。
  8. アナログ停波/地デジ移行
    自分が子供の頃、誇りに思う話の一つが、故高柳健次郎氏が今の静岡大学工学部で初めてブラウン管式テレビの開発に成功したという話。その時のシステム(模型)を子供の頃工学部で見たり、その時に表示された「イ」の字の石碑をNHKの浜松放送局に見にいったりしました。そんなアナログ放送が今年終わり、デジタル放送の時代になり、見た目だけでなく「放送」というシステムも、双方向性やデータ情報の埋め込みなど、随分と様変わりしたことを感じます。たまに、昔録画した放送等を再生して見ていると、凄く懐かしい感じというか時代を感じますしね。時代の流れと共に、新しいものが生まれて古いものが消えていくわけですが、その一つに今年は立ち会えたわけです。
  9. SNSが一般的ツールになる
    日本で言えばmixi、世界的にはFacebookになるんでしょうか、これまでもユーザー数が増えてきたけれど、今年は年初に震災が有り、その中でFacebookが活用されたりしたこともあり、一気に広がった気がします。また、「アラブの春」など、その影響力も大きくなったし。Googleも遅まきながらGoogle+をスタートしたり、LinkedInも日本に上陸したりと、いろいろなシステムが増えるのは良いけれど、結局ユーザーからすると全部に自分のアカウントを作らないと、片手落ちになってしまうのが面倒。SNSで自分のネットワークを作るときに、完全に現実社会とは分離された「ネットワーク上だけの関係」を作れれば良いのだけれど、それって匿名とか別名で「人格」を作らないと、なかなか作る事が出来ません。現実を引きずる要素があると、どうしてもリアル世界でのしがらみがネット世界にも持ち込まれて、結局不便な関係構築が出来てしまうのが、個人的には嫌。それなら、本当に親しい人、関係構築したい人だけと結びつきを得たいわけですが、それをするとそれ以外の人からは「なんだあいつは」みたいな話が出てしまうし。結局自分なりに出した答えが、SNSはあくまで自分へコンタクトするエントリーポイントだけに使うこと。まぁ、あまり意味が無いと言われればそうなんだけど、結局それ以上のことを使用とすると、それに費やすエネルギーがたいへんなわけで、そこまでしてまでSNSに自分のリソースを消耗したい区内という結論に達したのが今年でした。
  10. 電子ブックの普及と自炊
    Tabletデバイスの普及も大きな要素になったと思うし、出版業界やデバイスメーカーも積極的に電子ブック展開を始めたことも大きな原因だと思います。一方で、既存の書籍をスキャンして電子化する「自炊」行為の是非や、そういうサービス提供が問題になったりもしました。自分も本を読むのは好きなので、この電子化は応援したいところなんですが、困ることの一つが「読むデバイスに物理サイズが限定される」こと。例えば8"サイズのリーダーがあったとして、文庫本のデータを読む場合も(大きすぎる)、グラビア本のデータを読む場合も(小さすぎる)、どちらもサイズ的にはちょっと困る大きさになります。「書籍なんて、最終的には書かれている文字を読むことだから、その基礎データ(テキストデータ)があれば十分」なんて昔は考えたことがありましたが、確かにそれで済む場合もあるけれど、やはりそのサイズにその段組で構成されていることで生まれる価値もあるわけで、もし電子ブックとして固定されたデバイスで表示させるならば、そういう部分を含まない、解決できる何か別の方法も必要なんじゃないかと。あるいは、スマホ、小型タブレット、モバイルPC、大画面のデスクトップ、と末端のデバイスに依存せずに、必要な時に必要な場所で自分のデータをいつでも使えるような仕組みがあればいいのかもしれないけれど。そうすれば、TPOに合わせて自分の好みの電子ブックを一番しっくり来る状態で読むことが出来るわけだし。一方で、作家・著者にしても、これまでのように最終的に製本を居下書き方ではなく、自由書式というか「内容・データで勝負する」ような考え方も必要になるのかも。末端だけ変化しても大きな変化は生まれないということでしょうね。
それ以外で気になった、「番外編」も少し...
  1. パソコンメーカーが"Made in Japan"を訴求
    一番最初にTV-CMとかで言い出したのは富士通だっただうろか。国産メーカーはある意味当然という気もする中で、HPとかDELLすらも国内で製造して発送している事を宣伝する記事をよく見かけました。さらには、NECと合併したLenovo-Japanも、国内の法人向けPCの製造をNECの工場で行うという話も登場し、これまでのコスト至上主義から、品質や納期といった顧客満足度向上も含めた全体的な「製品価値」の視点に移ってきたように感じます。それは、別にPC業界だけの話ではなくて、例えばコンビニのおでんなんかでも、国内で調理するもの、中国やタイで製造・調理するものが一緒に煮込まれていても、特に我々は違和感を感じないし、そういう部分ではなく「惜しい・安い」という基本的な部分で価値判断しているのが現在の購買活動。だから、日本製と言う事に拘るのではなく、日本で作業する・加工する事でより付加価値が高まることが重要だと思いますね。そういう視点で"Made in Japan"、"Built in Japan"といった製品が増えていくのは好ましいことだと思います。
  2. Ultrabookが始まる
    Netbookの二番煎じとなるか、新しいフォームファクターとして今後のモバイルPCの主流となるのか、正直今年登場してみたものの、インパクトはそれ程ではなくTabletやスマホの影に隠れた印象があります。Ultrabookの定義は、「最厚部が21mm」は良いとしても、重さについては特に言及らしいものは無く、実際にUltrabookとして登場してきたモデルを見ると、だいたい1.2kg~1.4kgと、今あるモバイルPCとそれ程違いはないんですよね。正直、このままでは魅力は感じない。せめて、1kgを切ってくれないと"Ultra"とは感じない。これからIntelも何世代かChipsetを出してきて、それに対応してシステムの方もスリム化されていくんだろうけど、軽量化と画面の高解像度化もそれに合わせて進まないと、Tabletとかにその座を奪われてしまうような気がします。
  3. 災害と部品調達
    東日本の震災では、マイクロコントロール用のチップが影響を受けたり、タイの洪水ではHDDに深刻な供給不足が発生しましたが、製造調達メリットのある場所にある程度リソースを集中しないとコストメリットが出ない反面、集中しすぎてしまい何かあったときの影響が大きいことも、今回各メーカー実感したでしょうね。PC以外にも、自動車やカメラとか。こればっかりは、地域を選ぶことは難しいし、結局はこういう災害時の経験を次に生かして、より災害に強い工場・組織に作り替えていくしかないんでしょうね。
  4. ネットカンニング
    今年の初めに発生した、携帯電話と掲示板を使った「ネットカンニング事件」。最初は組織的な仕業とか思われましたが、結局は携帯電話一つ使って受験生が一人で行った単純な作業だとわかり、ネットワーク世代・携帯世代を実感した事件でした。今後、より小型なデバイスが登場してきたら、もっと直接的なカンニングとか(目で見ている問題をそのまま外部に送信して回答を得る)生まれそう。今後は、電波暗室みたいな環境で試験会場を覆うような事も考えないといけないかも。
今年も色々あった一年でしたが、個人的に特に印象に残っているのが、やはり一番最初に上げた震災・復旧・復興時に活躍したIT関連技術や、それに関わる人達のパワーです。日本だからこそ、ここまでのことが出来たという気もします。無くなった人、失ったものは戻らないけれど、でもそれらを乗り越えてまた新しい基礎を作るだけの力が国にも、地域にも、そして人にもあることは、恵まれていることだと感じます。次は、かなりの確率で東南海地震・東海地震が予想される今、次は自分がその被災者になる可能性も高いわけで、その為に何か出来ることを来年は考えていきたいですね。

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